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なお、これらの点は、おそらく国民各層からも広く支持されていたであろう。一、政府は少なくとも財源の確保という面においては、積極的な役割を果たすべきである。つまり、医療サービスの提供方法については官を主にするか、民を主にするかで対立しても、財源面については官に大きな責任があることには異論がなかった。二、国民全員に平等な医療を提供することを最優先する。逆に言えば、医療の質の向上よりも、だれもが同じレベルの医療を受けられるようにすることが優先される。

三、上記を達成するための最大の課題は、病院や診療所の整備という医療サービスの量的拡大である。以上のような基本的な合意があったため、実際の争点はイデオロギーよりもお金や権力にあった。端的にいえば、厚生省は医療費を抑制しようとし(医療費の抑制は一定の財源のもとでの量的拡大を図るためにも必要)、日本医師会は医師の所得の拡大を図ろうとした。そして、昭和五〇年代の前半までは一般に医師会側が戦いを有利に展開していた。権力についてぱ、話がもっと複雑であり、厚生省の目的は医師の診療内容を統制することにあり、日本医師会の目的は政策決定において指導性を発揮することにあった。

両者の抗争は、サムウエルスが「相互了承」(種々な場面で抗争が行われ、それぞれの状況における力関係の変化によって結果が変わる)と呼ぶ状況をもたらした。日本医師会は政治的に優位にあったので個別の戦いには勝ったものの、厚生省に完勝して医療体系を抜本的に作り替えるほどの力はなかった。その結果、昭和四〇年代後半には、一応の妥協策として、お金の面では日本医師会に有利に、制度面では厚生省のほうが優位な体制が成立した(第四章参照)。

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医学にこのような限界があるからこそ、各医師は個々人が磨いた「芸」を重視し、自らの診療に対する厚生省はもちろん、他の医師の介入もきらうわけである。こうした従来の考え方に対して、科学主義は二つの観点から新たな方向性を提示した。その一つが、各々の診療場面において最適と考えられるパターンの標準化を目指すことである。

すなわち、各専門医団体がそれぞれマニュアルやガイドラインを作成し、それについて研修した専門医のみに診療を限定すれば、高いレベルの標準化した医療が提供できるようになる。もう一つが医学のフロンティアに対する挑戦である。すなわち、遺伝子治療等の先端医学を駆使することによる病気の克服である。いずれも医療の質を高めることになるので患者の利益になり、さらに重要なことは医療分野への財源配分を増やすことを正当化することになる。

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